イソヒヨドリ

ご存知だろうかイソヒヨドリ。青い鳥。青と橙の。雌は茶色。

近年都市部でも見かけるようになった美声の鳥で、我が家にも巣を作ったことがある、いい感じの鳥。

ここ数日、そいつをず〜っと見かけた。

3月から非常に慌ただしくなり、体調的に録音も進められず悶々としていたので、沖縄に休養に行くことにした。同じ週に弾丸で東京にも赴いているからか、出発の前日には疲労がピークに達し、果たして飛行機なんぞ乗れるのかという体調だったのだが、トロピカルな風を身体に入れて録音の続きに取り掛かりたかったので、取り敢えず早起きしたのである。マジで苦痛極まりなかったが、早朝は鳥的にはとてもいい感じらしく、駅のホームで楽しそうにはしゃぐイソヒヨドリ家族と対面した。

小「お」

イ「おは」

そんな感じで軽く挨拶を済ませた。沖縄に向かう飛行機で熟睡し、若干体調を取り戻した私の目に飛び込んできた沖縄は、あのブルーとオレンジだった。

小「お」

イ「ちは」

元々沿岸部に多く生息する鳥である。そら沖縄のがおるわな〜なんて思いながら綺麗な青を写真に収めていった。近頃はバードウォッチングによく出かけるようになったので、スマホに取り付ける簡易望遠レンズを買ったのである。値段相応の作りだが、鳥が大きく写るのは楽しく、よく持ち歩いている。特に何の予定も立てず訪れたので、とりあえずレンタカーを借りて、道路に看板の出ているところなど思い思いにぶらついた。車を止めてまず、耳にするのは聞き慣れたあの美声。

小「お」

イ「ようおいでめんそーれ」

完全に尾けられている。マングローブやガジュマルをぼーっと見ているとすぐ近くにとまっている。沖縄そばを食べようと店に寄ったら屋根の上で待っている。宿に着いたと思ったら門の上で待っている。綺麗なビーチに着いたぞと思ったら海の家で家族で待ち受けているなどなど。完全に専属観光大使である。可憐だ。実にゲストのツボを心得ている。

せっかく沖縄に来たので、あまり関西で見ない鳥も見たいなぁと思っていたが、積極的に生息地を調べた訳でもないので、いつも見かける鳥しか見ていない。ただ、その自然の様相は結構異なり、住んでいる方がとても大切にしているであろうことが伝わってきた。敬意とともに畏怖の対象でもある自然というのはあまり見かけることがないので、じっと過ごしているだけでも何か取り戻すような感覚になった。自分の暮らしてきたような地域では、自然はコントロールできない存在として、わりかし疎まれているように思う。手に負えない存在は疎まず敬う。いい捉え方だなと思った。何事にもデメリットとメリットはあるということだ。新緑の季節ということもあり、若葉の色が可愛らしく、強風が多いためか高い木が少なく棚のようで、熱帯らしい厚手の葉っぱもいい感じだった。

なんかいい感じにあやしい楽器を見かけたら持ち帰って今回の録音で使おうと目論んでいたが、ちゃんとした楽器にしか出会えず、石や貝を持ち帰るのもなんか良くなさそうなのでやめた。都市部ではいつも暮らしている風景と大差はなく、勝手にさみしさを感じたが人間の都合を考えればそうなるのは当然だろう。10年ほど前に訪れたときには、なかなかいい音楽にも触れたが、今回は特に気になる音楽には触れなかった。積極的に探した訳でもないし、タイミングの問題だろう。人間には自分が必要だと認識しているものと、本人は認識していないが必要なものがあると考えている。今回は休養なので、後者を得られれば万歳だなと思っていた。物質的ではないところ、無意識に近いところで得られたものがあるように感じている。でかいガジュマルといっぱい写真を撮った。

ぼちぼち仕事も落ち着くと思うので、今週から録音再開。来月はライブもあります。お席少なくなってきているので、椅子でのご観覧を希望される方は僕に連絡ください。木々がさわさわ言ってたのと、鳥たちが楽しそうに騒いでたのと、ガイドしてくれたイソヒヨを時々思い浮かべながら残りの録音も頑張っていきます。